老子小話 VOL 778 (2015.10.10配信)

鳥語虫声、総是伝心之訣。

(菜根譚)

 

鳥語虫声も、総て是れ伝心の訣なり。

 

この一週間は、日本中ノーベル賞受賞に沸いた。

月曜は、大村先生の医学生理学賞受賞、

火曜は、梶田先生の物理学賞受賞である。

大村先生は、土壌に含まれる微生物が作り出す

新物質が寄生虫病に効くことを突き止め、

梶田先生は、宇宙の彼方から地球に降り注ぐ素粒子

ニュートリノに質量があることを実証した。

いずれも、自然の発する声を静かに聞き取った成果といえる。

今週の言葉は、

「小鳥のさえずりや虫の音も、すべて宇宙にあまねく

満ちわたる真理を以心伝心に伝えている秘訣である。」

と、ご両人の功労を讃えているようだ。

ゴルフ場の土の下で微生物がせっせと新物質を作る仕事の

お陰だと謙遜されたが、そういった自然の声に真摯に

耳を傾けるところから大村先生の研究が始まっている。

岐阜県の山の下に作った巨大水槽に飛び込むニュートリノが

発する光を長期にわたり観測し、自然の微光に真摯に

目を向けるところから梶田先生の研究が始まっている。

隠された自然の真理が、老子のいう「道」であり、

「道」は、発見と共に新たな姿を見せ、究極を突き止める

ことはできない。

しかし学者先生でなくても、自然の声に耳を傾けることはできる。

雲の動きを見て、天空で変化する大気の流れを思い描くのも、

自然の声を感じようとする試みといえる。

ささいな驚きが未来の発見につながるかもしれない。

発見の感動なきところに進歩はない。

2つの受賞を見て、そう感じた。

 

有無相生

 

 

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