◆老子小話 VOL
775(2015.09.19配信)
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、
敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。
(孫子、形篇第四)
先週に続き、安保法案でほえてしまう。
安倍首相の肩を持つわけではないが、
自国のみで防衛できない限り、安保同盟の結束を保ち、
防衛戦線への貢献をするのは当然といえる。
そのための法整備は十分な議論を重ね、速やかに成立
させるのは国の未来をあずかる与党の責務といえる。
憲法に違反しているかは、今後司法の判断を仰げばよい。
集団的自衛権の行使をどこまで制限すべきかは、
国民が選択した内閣の判断に負うことになる。
権利があっても、それを行使するかは別問題である。
今回の孫子の言葉は、
「戦争に勝利するのは、開戦の前に勝利を得て開戦する。
戦争に負けるのは、開戦してから勝ちに行く。」
後者は、太平洋戦争の日本であり、ベトナム戦争の米国である。
真珠湾で勝って気勢を上げたが後が続かず、原爆で終わった。
安保同盟の韓国軍を参戦させ、ベトコンを駆逐するため
密林を焦土と化したが、中国軍の参入で反撃され撤退に至った。
戦う前に勝つとはどういうことか?
完璧な防衛システムの準備で、相手に勝てそうもないと思わせる。
守りを堅固にするのが、今回の安保法整備といえる。
孫子の思想は、戦争は行わずに優位に立つことを最善に置く。
その理由は、戦争が長引いて、国家に利益をもたらしたためしが
一度もないからである。
しかしいくら完璧な同盟関係を築いても、勝てるとは限らない。
攻めるのは相手であり、味方ではない。
同盟の亀裂を生じさせ、その弱みを狙って攻めてくる。
力の緊張関係の中で、平和が保たれるというのが現実といえる。
戦争というと物騒だが、自然と人間の関係も似たところがある。
いくら堅固な堤防を作っても、荒れ狂う川は一番弱い箇所を衝く。
最終的には、自分で自分の命を守るしかない。
同盟関係が崩れたときに、どのように自国を守るべきかを
まず考えてから、安保法を整備するのが筋である。
それが抜け落ちて、法整備うんぬんで終わるのが残念である。
集団的防衛の前に、自己防衛の議論が欲しい。
沖縄の米軍基地が自衛隊基地に置き換われば、安保はもっと
身近になる。
有無相生