老子小話 VOL 768 (2015.08.01配信)

夏河を越すうれしさよ手に草履

(蕪村)

 

猛暑の日が続きますが、何とか耐えしのいで、

居られますでしょうか。

涼風をお届けする蕪村の句を挙げました。

子供というのは水遊びが大好きです。

公園の噴水の周りに集まり、水遊びを始めますが、

気がついてみると、服をびしょぬれにしています。

蕪村も、ふるさとの丹後に帰る途中、夏河を渡った

幼少の自分を思い出しています。

履物を手に持って渡れる川なので、小さな川でしょう。

ふるさとに早く帰りたいという思いと、

熱くなった足の裏を冷たい水で早く癒したいという思いが

交じり合って、川を渡っているときにうれしさがこみ上げる。

そのうれしさが、草履を持つ手の動きになって表れる。

子供ですから、手は前後に振られ、足取りも軽く渡る姿が

目に浮かんできます。

はずむ心は歌を口ずさみます。

涼しさは、夏河のひんやりとした水の流れ、そこに足を浸す

子供の軽やかな足取り、そして川面に反射する光の記憶として、

この句に込められています。

川遊びは今も涼しさを運びますが、顔や手足を冷やす程度にし、

決して飛び込むような無茶をせず、楽しんでください。

水は生命に潤いを与えますが、侮ると溺れる危険を招きます。

 

有無相生

 

 

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