◆老子小話 VOL
766 (2015.07.18配信)
文化においては多様性こそ力である。
(池澤夏樹、「終わりと始まり」)
戦争が終わるたびに誰かが後片付けをする。
物事はひとりでに片付くわけではないから。
とポーランドの女流詩人が詠む詩題から
「終わりと始まり」と名づけた池澤氏の
エッセー集(朝日文庫)よりお言葉を頂戴した。
戦後70年経ち、本当の戦争を知る人が残り僅か
になろうとしている。
歴史上どの戦争も自国を守ろうとして始めている。
後片付けは、そのような事態に陥らないために
何を準備すればよいかを過去から学ぶことを意味する。
池澤氏は、日本の歴史・文化、および日本人の精神性を
古代よりその支えてくれた縄文人やアイヌ民族や琉球民族
の重要性を指摘している。
太平洋戦争のみに目が向きがちだが、国の歴史自体が
少数民族排除の歴史だったことを記憶にとどめたい。
お隣の中国しかり、米国しかりである。
大和朝廷による蝦夷・熊襲の平定は、先住民族の排除だった。
東北にアイヌ語由来の地名が多いのは、アイヌ文化の名残である。
東北人の屈強さは、アテルイの反骨精神の名残かもしれない。
一方、琉球王国は薩摩藩の侵攻を受ける前まで、海上貿易で
栄えていた。琉球泡盛にタイ米が使われるのは、タイとの交易から
泡盛の文化を移入したようです。
文化交流による民族への理解が戦争を回避するように思います。
ユダヤ民族を排除したのがナチスドイツの悲劇です。
互いの文化を認め合うことで文化は進化し、多様性という力で
心の受容性を養う。
ピース又吉氏の芥川賞受賞は、文学の多様性を促し読者層を広げ、
ひいては出版界を活気づける。
海外移民の受容は、文化の多様性による相互理解を促し、ひいては
平和の礎を築く。
集団的自衛権の法整備で同盟国との結束を深めるのもよいが、
国を開いて、文化の多様性を高めて平和に向かう道を進むのが
文武両道といえる。
有無相生