老子小話 VOL 765 (2015.07.11配信)

握土成金猶可易

変金為土却還難

(禅林類聚)

 

土を握って金と成すことは猶易かるべし、

金を変じて土と為すことは却ってまた難し。

 

今回は、「禅林句集」(岩波文庫)より拾いました。

この本は、中国の古典からいろんな言葉を集めて

まとめたもので、論語や老子、唐詩から無門関まで

幅広い範囲にわたっています。

しかしながら、言葉だけで解説はないので、

読者それぞれが好きなように解釈できる仕組みです。

私は、次のように解釈してみました。

「土のように価値のないものを金のように大事にする

のはまだ容易である。

金のように大事なものを土のように扱うのは

かえって難しいものである。」

骨董品を集めている人は、他人ががらくたと

思っているものでも大事に扱う。

自分の価値観を信じて味わうのはまだ容易にできる。

しかし、高価なものとして価値が定まっている金を

無視して、無価値と扱うのは至難であろう。

定説済みの固定観念を振り払う難しさを教える。

もうひとつの解釈は、五行説によるものです。

五行説とは中国古代の自然哲学で、万物は、

水・木・火・土・金の5元素からなるというもの。

水は木(植物)を生じ、木は燃え火を生じ、

燃えた灰は土を生じ、土は地中に金(金属)を生じ、

金は溶けて水のようになるので水を生じる。

金の原因(みなもと)である土を見て、結果である金を

予想するのは比較的簡単にできる。

しかし、結果である金を見て原因となる土を予想する

ことは意外と難しい。

こうすればこうなるというのはわかりやすいですが、

こうなるために何をすればよいかを考えるのは難しい。

ダイエットをすればやせるのは誰でも気づきますが、

やせるにはいろんな原因があり、どの原因でやせるかは

自分にあった選択がある。

節食でやせるか、運動でやせるか、下剤でやせるか、等々。

以上、好き勝手な解釈をいたしましたが、皆様の解釈は

いかがでしょう。

ひとつの言葉から思いを廻らす機会をいただけるという

楽しみを「禅林句集」は与えてくれました。

 

有無相生

 

 

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