老子小話 VOL 764 (2015.07.04配信)

牛がいなければ飼い葉おけは清潔だが、

豊作をもたらすのは牛の力。

(旧約聖書、箴言)

 

助け合って事を成すという聖書の言葉をお届けします。

飼い葉おけは、牛が食べる草を入れるおけのこと。

牛を育てるために、毎日新しい草を入れ替えなければ

いけません。

草を食べれば糞をしますから、おけだけでなく、

床の掃除も行わなければいけません。

生き物を育てるということは、食料を施し、

身の回りの世話をし、さらに心のケアも必要です。

赤ちゃんの養育も、老人の介護も同じです。

育てるのは負担が大きいから、赤ちゃんなんか

要らないとか、介護はおまかせすると現代人は考える。

しかし、育てることで、育てる対象から得る収穫は

大きいと聖書は教えます。

自分は育てられて大きくなったことを忘れて、

ひとは育てることに億劫になる。

余計なお荷物から離れて清潔快適な生活をしたいという

気持ちもわかりますが、育てた後に味わう充実感は、

人生のひとつの収穫といえます。

介護を、育てたひとへの恩返しと考えるなら、

恩返しする姿は、次世代に自分の未来を見せる機会になる。

育てられることで育ち、育てることで育てられる。

タオの思想では、これを原点回帰の原理という。

施した恩恵は、廻り廻って自分に帰ってくる。

食物連鎖は、食うことで生態系から恩恵を受け、

食われることで生態系への恩返しをする。

食われないものは、死んで朽ちて微生物のえさになる。

自然の流れのなかで、万物は皆互いに恩恵を施しあう。

人間だけがひとり占めできるはずもない。

聖書の言葉は、牛をたとえにタオの原理を述べたようだ。

 

有無相生

 

 

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