老子小話 VOL 761 (2015.06.13配信)

不忘其所始、不求其所終。

受而喜之、忘而復之。

(荘子、大宗師篇第六)

 

その始まる所を忘れず、

その終わる所を求めず。

受けてこれを喜び、

忘れてこれをかえす。

 

荘子の一説から拾いました。

「生を受けたことを忘れず、これを喜び、

死ぬときは、あれこれ詮索せずすべて忘れて、

生を大自然に返上する。」

自分の墓には、こんな言葉を刻みたいものです。

訪れた人が口ずさんで、今この生を味わえる言葉。

何で自分がこの世に生まれたのか?

自分の生誕には、親同士のめぐり合い、

偶然に授かった命、命を育むドラマがあったことを

決して忘れず、今まで生きてこられたことを喜び、

死を迎えるときは、一切を忘れて命を自然にお返しする。

「なぜ今死ななくてはいけないのか」

「もう少し生きたかった」

と求めずに、すでに営まれた生の充実に感謝する。

自分の生についてじっくり考えさせる言葉です。

アウレリウスが「自省録」で、

「何物も無から生ぜず、同様に何物も無に帰らない」

と語るように、自分の生も、大自然のめぐり合わせの中で

生まれ、めぐり合わせにより土に帰っていく。

子供のときにこの死生観を学べば、何が起きても動じない

強靭な精神力が養えるのではないかと思います。

中国の古代の宝を、今の日本で花咲かせましょう。

社会の秩序を重んじる儒教に先立つ、宇宙の原則をまず

身に着けるべきというのがタオの哲学です。

 

有無相生

 

 

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