老子小話 VOL 758 (2015.05.23配信)

多いことは少ないことだ。

(シーナ・アイエンガー、「選択の科学」)

 

数年前にベストセラーになった本だが、

去年文庫本で出たのを買って一年遅れで読んだ。

なぞかけみたいな言葉だが、真理をついている。

選択肢が全く無いと自由を奪われたように感じで

幸福を感じない。

選択肢が多ければわくわくするかといえば、

選択肢が6つを超えると、選択の自由を満喫する

幸福感は低くなる。

店頭の試食ジャムの種類を24種類にしたら、

試食にすら客の関心は薄れていく。たとえ試食しても、

商品棚でどのジャムがおいしかったか思い出せず、

買わずに帰っていく。

同じような経験は誰にでもあるようだ。

ビール、発泡酒、第3のビール、ノンアルコール飲料

と大量の商品が棚に並ぶが、多すぎて何を買おうか迷う。

本屋に行っても、本の数が多すぎて何が面白そうか

見つけ選ぶのに苦労する。

書評に頼り、選択を他人にまかせることもできるが、

読む本は自分で決めたいという願望もある。

昨夜Eテレの「哲子の部屋」で、情報過多の社会で、

なぜ若者は恋から遠ざかるのかという番組をやっていた。

ネットを通し知り合う機会は増えており、恋人候補は

大量に見つかるが、候補だしで疲れてしまいそのあとの

恋人選びは後回しになる。

アイエンガー氏は、人間の情報処理能力は7前後の

選択肢が限界であるという。

選ぶときには、候補を7以下のパターンに類型化し、

そこから選ぶようにすれば、脳みそがオーバーフロー

せずに選択可能となる。

もう一つの手は、選択を放棄する選択もあるという。

すし屋でおまかせを頼むのに似ている。

結婚相手や就職先を親や誰かに決めてもらう。

選択の苦労よりも、選択後の向き合い方を大事にする。

まあいろんな選択のしかたがあるが、いずれにせよ、

選択によって人生は形作られる。

選択肢が多すぎるからと選択しないで可能性を棄てるより、

選択肢を減らす選択をして、処理能力の範囲内で選択して、

一歩ずつ可能性を切り拓く姿勢をアイエンガー氏の言葉は

教えてくれる。

 

有無相生

 

 

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