老子小話 VOL 756 (2015.05.09配信)

当に人と過を同じくすべく、

当に人と功を同じくすべからず。

功を同じくすれば相忌む。

(菜根譚)

 

ねた切れで苦しいときの菜根譚です。

今回のお言葉は、人の心理をついています。

「ひとと失敗の責任を分かち合うのはよいが、

成功した功績を共有しようとしてはいけない。

共有しようとすると、仲たがいの心が生じる。」

戦国時代は、いくさの勝利に誰が貢献したかで

恩賞が与えられ、出世が決まります。

自分が貢献したと思っても、自分ではなく

ほかの家来にほうびが与えられた場合、納得がいかず、

俺がなぜもらえないのだと不満を抱くと、

次第に仲たがいするようになります。

反対に、作戦に失敗して責任を取らされる場合には、

できるだけ関わらないように言い訳するのが常です。

これは戦国時代に限らず、現代のサラリーマン社会でも

いえることです。

失敗したときはひとのせい、成功したときは自分のせい、

と思いがちです。

地位が高くなればなるほど決定権が増すので、失敗したときは

部下の提案がまずかったとつい思うのです。

部下がリスク評価を誤ったために、自分の判断が誤ったと。

ところが菜根譚は、失敗したときは最終の責任を負い、

成功したときは、部下の功績を誉めるのが上司といいます。

これが一番現れるのが、プロ野球の勝利監督インタビューです。

試合に勝ったのは、逆転ホームランの打者のみならず、

敵の反撃を抑えた投手であり、出塁を抑えた守備であり、

ホームランの前に塁に出た攻撃の粘りだと分析します。

選手皆の功績を誉め、自分の采配に言及しないことで、

メンバーの自覚を高め、チームの結束は一層強くなります。

次の試合に負けたとしても、個人個人が何が足りなかったか、

反省し責任を負うことで、チーム力はアップします。

このように菜根譚の教えは、組織力向上のための

優れたアドバイスになっているようです。

 

有無相生

 

 

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