老子小話 VOL 754 (2015.04.25配信)

唯今がその時、その時が唯今なり。

二つに合点してゐる故、

その時の間に合わず。

(葉隠)

 

今回は三島由紀夫氏の「葉隠入門」からお届けです。

武士は、毎朝自分の死を思い浮かべ、

どんな状況の中で死と対面しても、動じないように

心がけました。

「その時」とは、いざという時のことです。

「唯今」は、平時のときです。

まさに今が緊急時として準備しておけば、

緊急時が今起こっても慌てずに動ける。

それを平常時と緊急時は別物と思っていると、

いざという時、思うように動けない。

武士にとって動けないときは、死を意味します。

我々は武士ではありませんが、何が起きても

動じないように身の処し方をあらかじめ準備して

おくことが必要なようです。

地震が起きて津波が襲ってきたとき、

乗っていたエレベータが階の途中で止まったとき

夜道で不審者が近づいてきたとき、

いろいろ想定できますが、どう動けばよいか

決めておくと、落ち着いて対処できるでしょう。

毎朝通勤していて、気が気じゃないのは、

後ろから電車が迫っているのにホームの縁を

歩いている人です。

誰かに押され、あるいはぶつかって転落すれば、

確実に電車にひかれます。

押されなくても、電車にぶつかって他の人に

衝突し、二次被害を起こす危険もあります。

怖いことは常に起こりえます。

危険を避けるには、危険を想定しそれに備える

心構えが必要になります。

更に「葉隠」は、備えたことがすぐに行動に

移せるかを問います。

その原点が、毎朝自分の死を経験するという

次の心得のようです。

「朝毎に懈怠なく死して置くべし」

 

有無相生

 

 

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