老子小話 VOL 749 (2015.03.21配信)

本当に深刻なことは、

陽気に伝えるべきなんだよ。

重いものを背負いながら、

タップを踏むように。

(伊坂幸太郎、「重力ピエロ」)

 

書名の面白さに惹かれて読み始めました。

「重力ピエロ」

重力とピエロの関係がわからないまま、

上の「春」の言葉に出会いました。

サーカスや大道芸に登場するピエロ。

笑っているのか泣いているのかわからないメーク。

危険な曲芸に挑戦していても、

危険を感じさせないおどけた仕草。

深刻な場面に陰気な顔をすると、重力に引かれて

心が落ち込んでいく。

圧倒的な重荷を背負っていても、それを感じさせない

顔や振る舞いをすると、心が上向きになり、

周りのひとも気が安らぐ。

重力を感じさせないピエロは、陽気に深刻と取り組む。

苦しいことなんて、あえて言わなくてもわかる。

その苦しさを跳ね返す陽気な顔に周りは救われる。

でも無理にピエロになれとはいわない。

深刻と取り組む自分を眺める自分が心を少し楽にする。

冷静な眼で見ると、深刻と考えていた問題がそれほど

深刻ではなく、更なる深刻をはらむことに気がつく。

陰気でいては後が続かない。

陽気さで取組まないと先に進めない。

「重力ピエロ」の力強さに気づかされた。

無為という陽気さで、欲望という重力から心を

解放する老荘思想も、「重力ピエロ」といえるかも。

 

有無相生

 

 

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