老子小話 VOL 746 (2015.02.28配信)

学ぶとは、その学ぶ能わざる所を学ぶなり。

行うとは、その行う能わざる所を学ぶなり。

弁ずるとは、その弁ずる能わざる所を学ぶなり。

(荘子、庚桑楚篇)

 

今回は荘子のお言葉をお届けします。

「真の学問とは、自分の知恵では学べないことを学ぶこと。

真の実践とは、自分の才覚では実践できないことを実践すること。

真の弁証とは、自分の論理では弁証できないことを弁証すること。」

という。

まとめると、「知、其の知る能わざる所に止まるは、至れり。」という。

知ることができないことを知ることで、本当の知恵を得る。

つまり、「不知の知」に至る。

自分の知恵、行動、弁論の限界を知ることで、

自分以外のものと協力して、その限界を広げようとする。

他者の力を借りることで、至らない所を補う。

ひとは、とかく己の力を過信して足を踏み外す。

常に自分の非力をわきまえていれば、態度は自ずと

慎重かつ謙虚になる。

他者と比較して、己の力の優位を過信する。

しかしそれは、己を超えた存在に気づかず、

自分の知恵・行動・弁論という狭い世界で認識できる

優位に過ぎない。

自分を取り囲むもっと大きな世界を知ると、それまでの

自分が井の中の蛙であることに気がつく。

荘子は、人間同士の協力で得られた知にとどまらず、

人間界を取り囲む宇宙の真理まで、その知の限界を

広げようとする。

宇宙の真理は、人間に生存の意味を教える。

人間が生存できるのは、宇宙の歴史の一瞬に過ぎない。

それを知って、われわれは貴重な一瞬をどう生きるか

宇宙から問われているように思える。

 

有無相生

 

 

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