◆老子小話 VOL
745 (2015.02.21配信)
川に落ちれば、泳ぎのうまい下手は関係ない。
岸に上るか溺れるか、ふたつにひとつだ。
(サマセット・モーム、「月と六ペンス」)
モームの「月と六ペンス」はおすすめです。
モームの鋭い表現力に思わず引き込まれます。
泳ぎがまだうまくない頃、この言葉通りの経験を
海で味わいました。
生き続けるには、浮いているしかないと思うと
余計な力が抜け、くらげのように水面を漂う。
そして波が寄せたとき、ばた足で岸に向かう。
浮遊と波乗りの繰り返しで、岸にたどり着く。
泳ぎのうまい下手は、生きるか死ぬかに関係ない。
なぜなら、浮いているか沈むかで生死が決まるから。
このあたり前のことに、人生の各場面で出会う。
100%の出来を狙って対策を立てると、
時間ばかり浪費して先になかなか進めない。
経験のない新規事業を始めるには、とりあえず
始めて、続けることをまず考えたほうがよい。
受験でも、合格点をとろうと難しい問題からやると、
やさしい問題をやる時間がなくなり、あせる。
とりあえずできる問題から始め、積み重ねていく。
人生も、生れ落ちた所から始まるから、川に落ちる
のと同じようなもの。
うまく生きるか下手に生きるかは、幸せと関係ない。
あきらめることなく、たまに浮遊して周りの景色を
ながめ、今も生き続けていればそれに越した事はない。
モームは、鋭い表現で、この真実を語ります。
有無相生