老子小話 VOL 744 (2015.02.14配信)

宇宙の自然は自分以外には何も持っていない。

(マルクス・アウレリウス、「自省録」)

 

ローマ皇帝アウレリウスのお言葉をお届けします。

きゅうりが苦ければ、棄てるがいい。

いばらの道なら、避けるがいい。

でも、「なぜこんなものが世の中にあるんだろう」

と考えてはいけない。

この宇宙には、無駄なものは一つもない。

自然は、腐敗物や老廃物など不要になったものを

分解し変化させて、他の新しいものを再び創り出す。

動物の糞や落ち葉が栄養となり、新たな生物が誕生する。

核融合により星は大きく成長し、最後は爆発して塵となり、

次の新星を生み出すもとになる。

人間だけが自分の手に負えないものを創り出して、始末に

負えなくなる。

人造人間を作ったフランケンシュタイン博士のように、

作ったものに対して責任を負えなくなる。

自然災害に遇った原発からの放射性廃棄物は、どこかに

格納し、自然に放射能が消えるまで待たねばならない。

科学は、手に負えるか否かはとりあえず考えずに可能性を

追求して、結果的にそれが軍事兵器に利用されていく。

核兵器、細菌兵器、無人爆撃機、戦闘ロボットなど、

敵より先に開発して優位に立とうとする。

iPS細胞のように再生医療や創薬研究に役立ち、人類の平和に

貢献できる発見ならうれしい限りです。

人間には、自然界にないものを生み出す知恵はありますが、

生み出したものがどのような害を及ぼすかは見通せない。

生んでしまってから、害をどう防ぐか知恵を絞ります。

そういう時、アウレリウスの言葉はヒントを与えます。

自然界は、どのように作ったものを壊しながら新しいものを

生み出していったかを教えてくれます。

iPS細胞は、分化した細胞から未分化の細胞に戻せる自然の

仕組みを教えてくれます。

そんな未知の仕組みが自然界には限りなくあるということを

アウレリウスは語っています。

 

有無相生

 

 

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