◆老子小話 VOL
740 (2015.01.17配信)
つづきつつあるもなくなるあとの人の
またくる人につづくなりける
(西行)
ひとの歴史は先祖から今の世代を介して、
子孫に受け継がれていく。
西行さんもその確かな歩みを歌に詠みました。
西行さんのお宅に炭を届けてくれる炭焼きが
亡くなって、その息子が代わりに届けてくれた。
その息子もなくなると孫が届けてくれるようになった。
炭焼きの家業が代々受け継がれていく様子は、
歌舞伎や能という伝統芸能だけでなく、日本人の
思想や感性にもあてはまるようです。
先祖から受け継いだおもてなしの心は、世界の人に
感動を与えています。
浮世絵は印象派の画家に影響を与え、漫画やアニメは
世界の若者に人気です。
日本人の感性の繊細さは、日本の風土と密接に関係します。
四季の変化の中に自然の恩恵を感じ取り、自然への畏敬と
感謝が多神信仰になり、あらゆるものを受容しつつ、
そのどれにも流されないのが、日本人の感性の特徴です。
明治維新以降、西欧に追いつこうと軍事力や経済力を
高めるために、日本は画一主義を重視し道を誤りました。
感性の特徴である受容性と多様性を国政に生かせなかった
のが、軍国主義の道を歩むきっかけになったと思います。
世界の平和のためには、日本人の感性の繊細さを海外に
広める工夫が必要になってきます。
砂漠の地に、日本がオアシスを育てる技術が輸出できれば、
唯一神を信じる民にも、自然の恵みを感じる機会が得られ、
多様性を受容する自然観も生まれてくるのではないかと
思います。
西行さんの歌は、日本の中にとどまっていた、日本人の
感性が海外の人にも受け継がれ、世界平和に役立てる
可能性を詠っているようです。
有無相生