老子小話 VOL 737 (2014.12.27配信)

天地不仁。 以萬物為芻狗。

(老子、第5章)

 

天地は不仁なり。

万物を以って芻狗(すうく)と為す。

 

今年最後のお届けとなりました。

締めくくりは、老子以外にありません。

「大自然は無慈悲である。

万物をわらの犬のように扱う」

自然は、人間の道理を超えたところで動く。

そこには情け容赦などありません。

御嶽山の噴火や広島の土砂災害。

世界規模で見れば、アメリカの大竜巻。

そして、エボラ出血熱の拡大。

人間は自然によって生かされていますが、

自然が人間だけを特別視して恩恵を施して

いるのではなく、単に誕生から死に向かって

流れているに過ぎません。

物理の言葉で言えば、エントロピー増大の法則

に従って流れています。

万物は、その流れに乗って、生まれては消え

生まれては消え、生き残ったものが今あるわけです。

生まれては消えていく姿を「わらの犬」にたとえます。

そこには適者生存の原理が働きます。

人間は不思議な生き物で、自然とは別に「神」という

自然を超える存在を作りました。

「神」が自然を作ったことにし、「神」に慈悲の心を

見出します。だから、天地を「神」と考えると、

老子の言葉はおかしくなります。

人間は、「神」に安全と平和を祈ります。

しかし、安全と平和をもたらすのは、外にいる「神」

ではなく、内なる「神」です。

慈悲の心を持つのは、人間の心の中にいる「神」です。

自然の無慈悲に出会ったとき、互いに助け合って

乗り越えていくのは、心の「神」のおかげです。

元旦にお参りするのは、心の「神」への問いかけです。

古代から、人間は守護神を生み出し、それにすがり、

戦いを繰り返してきました。

十字軍の戦争は、キリスト教とイスラム教の戦いです。

しかし、どの神も平和より優位性・正当性を競いました。

老子は、その愚かさを高次の立場で笑います。

そもそも、人間を生かしている大自然は慈悲などなく、

気まぐれで生かしているのだと。

人間同士の慈悲で、その気まぐれを乗り越えるしかないと。

今年一年本誌を読んでいただき、ありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

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