老子小話 VOL 736 (2014.12.20配信)

曲則全。

(老子、第22章)

 

曲なれば、すなわち全(まった)し。

 

タオ(道)の話(TaoChat)を表題に掲げながら、

老子を取り上げることが少なかったので、

今回は締めくくりとして、第22章の

「曲がった木は寿命をまっとうする」をお届けします。

苦労のない真っ直ぐの道より、難所をくぐり抜けながら

曲がりくねった道の方が、人生最後まで楽しめるという。

上の言葉の後に、「芋虫は、体を曲げながら前進する。

水は流れて窪みにたまり、服は擦り切れて新しくなる。」

と続きます。

苦難にぶつかり道に迷い、ひとの助けや温情に触れながら、

前に進む勇気を得て、何とか乗り越えていく。

順風満帆の人生では、ひとの心の温かさに気づくことなく、

すべて自分の力でやり遂げたと勘違いするようになる。

老子のいう「水」はひとの情けであり、情けは困っている人に

向けられます。何にもぶつからずにすいすいと進む人には

向けられません。

逆に彼には、「そう慌てて進まずに、一休みして周りを眺めたら」

と声を掛けたくなります。

周りを見れば、困っている人が必ずいるものです。

助けられた方も助けた方も、寄り道で出会い、お互いに力を

譲り受け、ひと皮むけて、新たな道を進みます。

老子の「曲則全」をこんな風にイメージすると、ぎすぎすした

世の中が、少しソフトに見えてきます。

 

有無相生

 

 

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