◆老子小話 VOL
726 (2014.10.11配信)
勝兵先勝而後求戦、
敗兵先戦而後求勝。
(孫子、形篇第四)
勝兵は先ず勝ちてしかる後戦いを求め、
敗兵は先ず戦いてしかる後勝ちを求む。
青色発光ダイオードで、日本人3人が
ノーベル物理学賞受賞のニュースで沸いた一週間でした。
前々からとるぞとるぞといわれ続け、やっとの受賞でした。
本当におめでとうございます。
受賞者の記者会見で、受賞の理由を、
「研究テーマをどのようにアプローチするかより、
何をまず目指すのかを決めるのが大事。」
と赤崎先生が語りました。
そこで今回は、孫子の言葉をお送りします。
「勝つ者は、まず勝利して戦いを始め、
負ける者は、まず戦いを始め勝ちに行く。」
研究の場合でいえば、「まず勝つ」というのが、
「何を研究テーマに選ぶか」ということのようです。
動機が強ければ、失敗の連続でも執念は持続する。
周囲の波に乗って研究を始めても、皆が失敗すると、
原理的にだめかもしれないと不安になる。
青色発光ダイオードは、省エネ照明であり、
電球を置き換えるという社会的な影響力も大きかった。
ビジネスでいえば、「まず勝つ」というのは、
事業が成功したとき、社会的にどのような貢献をするのか、
よく考えて事業内容を決めることにあたります。
目標が決まれば、市場の理解に多少時間がかかっても、
いずれ賛同が得られ、事業が好転していくでしょう。
孫子が語る「まず勝つ」は、誰もがまだ目をつけていない、
社会的な貢献の大きい目標を見つけることになります。
赤崎先生は、
「たとえ自分の生涯で目標が成就しなくても、次の世代が
引き継いで研究は目標に近づくので、失敗は恐れなかった。」
と語っています。
人生を戦いにたとえるなら、「何を目指す」という信念が、
「まず勝つ」を決めているようです。
その目標に向けどのような道を歩むかはひとそれぞれですが、
継続して目指す力が生きる力になるのは確かです。
有無相生