老子小話 VOL 718 (2014.08.16配信)

経験ばかりにたよるのは

消化力を考えずに

食物ばかりにたよるものである。

 (芥川龍之介、「侏儒の言葉」)

 

芥川龍之介といっても今の若い人は、

知らないかもしれない。

芥川賞の芥川で、やっとわかるでしょう。

たまたま書店で「侏儒の言葉」を見かけました。

今時読む人がいるのかなあと思いながら、

ぺらぺらめくり思い出の言葉を捜してみました。

経験が豊富で何でも知っている人がいます。

経験を積もうと放浪の旅に出ることもあります。

経験は耳学問ではなく、身をもって体験したこと

なので、そこから得た知恵には説得力がある。

しかし、経験が知恵に変わるには消化力が要ると

芥川先生は言います。

経験が意味するものをもう一度振り返って考えて、

やっと経験は消化されて、知恵は身につく。

多彩な経験を積んでも、消化が足りないと、

ただ経験したで終わってしまいます。

たとえるなら、パック旅行に参加し、

駆け足であちこち回ったが、何を見たのか、

何を学んだのかさっぱり覚えていないようなもの。

食物も一度咀嚼して栄養に取り込まないとだめで、

いくら経験を積んだおとなでも、消化不良では

知恵はこどものままにとどまります。

夏休みは、経験をじっくり知恵に消化(昇華)

する時間のような気がします。

 

有無相生

 

 

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