老子小話 VOL 715(2014.07.26配信)

壷に入った一個の銅貨は

うるさく音をたてるが、

銅貨がいっぱい詰まった壷は

静かである。

 (タルムード)

 

タルムードは、ユダヤ人の知恵として、

五千年の間、語り伝えられた聖典です。

20巻もあり、ユダヤ人は子供の頃から、

ラビ(僧侶)から教えを受けて勉強しています。

タルムードの解説本から、この言葉を拾いました。

いろいろな解釈の仕方があると思うので、

皆様もお考えください。

壷を性格なり風貌に、銅貨を身につけた知恵と

考えることにしましょう。

思慮の足りない人は、わずかな知恵に振り回され、

派手な行動をとってしまう。

思慮深い人は、知恵で詰まっているので、

見かけは静かで、軽はずみな行動はしない。

こんな解釈ができると思います。

老荘の教えは、これと正反対のようです。

知恵が詰まっていると、それに捉われて

自由な発想ができないので、思慮深い人は、

いつも銅貨を持たないようにしている。

いわゆる「絶学無憂」の境地です。

壷を組織とし、銅貨を組織で働く人間とすると、

ベンチャー企業のように数人の社員しかいない

組織では仕事の自由度が増え、自分の声が

事業に反映される機会が多く、生き生きと働ける。

しかし、大企業になって社員が詰まってくると、

意見が通る機会が減り、黙々と働くようになる。

いったん壷にはまるとなかなか抜け出せません。

既成概念に毒されない子供のうちに、

いろんな壷を教えてあげて、壷の中の自由と制約の

バランスを体験させて、将来の壷を選択する機会を

与えるのが、おとなの役目かもしれません。

 

有無相生

 

 

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