◆老子小話 VOL
712 (2014.07.05配信)
そもそも一切は、陰陽の和する所の堺を、
成就とは知るべし。
(世阿弥、「風姿花伝」)
渡辺淳一氏の「秘すれば花」(講談社文庫)より
お言葉をいただきました。
陰陽(おんよう)とは、陰・陽の気のことで、
この気のバランスにより、万物の生成・消滅が
起きているという考え方です。
前回の病気の話でいえば、陰(ストレス)に
傾いても、陽(リラックス)に傾いても、
病気の原因を生むということです。
陰は夜を意味し、陽は意味します。
人間は、昼と夜の繰り返しで活動と休息のバランスをとる。
寝ずに働き体を壊し、寝すぎて眠れず心を壊す。
そんな陰陽の偏りは避けたいですね。
世阿弥は、能においては、
客席が浮きだって陽の時は、静かに落ち着ける陰の能を演じ、
客席が沈んだ陰の時は、気持ちを引き立てる陽の能を演ずる。
その場の雰囲気を感じ取り、陽と陰のバランスを保って、
観客をうならせるのが一流の芸能人というわけです。
最近話題の故宮博展は、白菜だけじゃなく山水画も見所のようです。
山水画も、陰陽の気のバランスを絵にしています。
墨のない部分(陰)をかたどることで、陽の部分が際立ちます。
岩山に雲がかかっているのは、岩と雲の堺を表現することで、
雲も岩もその形が露わになってくる。
岩肌もまたしかりで、光に反射するところは空白に、
岩陰に墨を落とすことで、その微妙な凹凸が表現される。
「陰陽の和する所の堺」で全てがうまく行っていることは
何となくうなずけると思います。
有無相生