老子小話 VOL 710 (2014.06.21配信)

老年は人間的なエゴイズムの束縛から

解放されている。ようやく解放されて、

魂は移りゆく一瞬一瞬を愛でる。

ただ、とどまれとは命じない。

 (サマセット・モーム、「サミング・アップ」)

 

モームは英国の作家で、「月と六ペンス」が新訳で

最近出たので、名前を聞いた人もいるでしょう。

「サミング・アップ」は、自分の人生を要約した

回想録で、ずばりとものをいうところが魅力です。

「人生に理由などなく、人生に意味などない。

これが答えである。」

という立場で、自分の楽しみのために、

人生模様を完成させてきたと振り返る。

若いときは、自己実現のため、ひたすら

エゴイズムを前面に押し出して生きる。

老年になると、人生模様はほぼ織りあがっていて、

エゴへのこだわりが抜け、周囲が見えてくる。

時の移ろいを鑑賞する余裕が出てくる。

と、モーム先生はおっしゃいますが、

今の日本を見ていると、投資意欲が旺盛なのは

老年であり、消費意欲が旺盛なのも老年。

エゴの束縛が抜けきれない老年が増えているのは、

高齢化社会の証なのかもしれません。

ただ、若さを競うより、老年にしか気づかない

新たな価値を発見する喜びを大事にしたいものです。

 

有無相生

 

 

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