◆老子小話 VOL
710 (2014.06.21配信)
老年は人間的なエゴイズムの束縛から
解放されている。ようやく解放されて、
魂は移りゆく一瞬一瞬を愛でる。
ただ、とどまれとは命じない。
(サマセット・モーム、「サミング・アップ」)
モームは英国の作家で、「月と六ペンス」が新訳で
最近出たので、名前を聞いた人もいるでしょう。
「サミング・アップ」は、自分の人生を要約した
回想録で、ずばりとものをいうところが魅力です。
「人生に理由などなく、人生に意味などない。
これが答えである。」
という立場で、自分の楽しみのために、
人生模様を完成させてきたと振り返る。
若いときは、自己実現のため、ひたすら
エゴイズムを前面に押し出して生きる。
老年になると、人生模様はほぼ織りあがっていて、
エゴへのこだわりが抜け、周囲が見えてくる。
時の移ろいを鑑賞する余裕が出てくる。
と、モーム先生はおっしゃいますが、
今の日本を見ていると、投資意欲が旺盛なのは
老年であり、消費意欲が旺盛なのも老年。
エゴの束縛が抜けきれない老年が増えているのは、
高齢化社会の証なのかもしれません。
ただ、若さを競うより、老年にしか気づかない
新たな価値を発見する喜びを大事にしたいものです。
有無相生