◆老子小話 VOL
709 (2014.06.14配信)
父為子隠、子為父隠、
直在其中矣。
(論語、子路第十三)
論語より本当の正直者の話です。
ある村に正直者の男がいて、自分の父親が
羊を盗んだのを知り、役人に密告した。
孔子はそれを聞いて、
「本当の正直者は違う。
父親は、子供のために盗んだことを隠し、
子供は、子を思う優しい父のために盗んだことを隠す。
正直さは自然に備わるものである。」と語る。
法律やしきたりの通りにそのまま動くのが正直ではない。
親と子の関係の中で、正直さは自然と備わる。
この話を聞いて、考えさせられるものがある。
子に密告される親は、子供との関係において、
正直さを表面的にしか教えてこなかった、ともいえる。
法律を曲げてまで情に従えといっているのでもない。
相手の立場をよく考えてから動けというのが
本当の正直者らしい。
そういえば、法律の条文にも、除斥とか忌避という
言葉が載っている。
事件の利害関係者には、事件の審理に関わらせない
ようにする仕組みである。
事件の当事者が親族や配偶者であったりすれば、
正直者でも、当然判断に情がからむという前提で
法律は作られている。
正直な心を養うには、思いやりの相互関係を
まず作らねばならない。
人間関係に限らず、国と国の外交においても
同じことがいえるように思えてくる。
有無相生