老子小話 VOL 704 (2014.05.10配信)

道に横経(よこたて)無し

立つ者は孤危なり

 (禅語)

 

今回は禅語です。

唐時代の「雲門広録」に載っているそうです。(「禅語100選」、三笠書房)

「一本のわき道もない大きい道に立つ者は危ない」という意味。

大きい道は、「見通しがよくて安心」と人任せでいると、

実際は、逃げ場がなく大変危険であると教えます。

例として、以前あった韓国の地下鉄火災が挙げられています。

車内に煙がまわっても、周りの人が逃げ出さなければ

大丈夫だろうという集団心理が働いたのが一因でした。

そして今回の韓国フェリーの悲惨な事故。

船内放送は「その場にとどまれ」でしたが、

船員たちは乗客を置いて逃げたあとでした。

助かった乗客は、状況判断を冷静に行い、

限られた時間内に避難できたひとでした。

高校生だと指示に従うという教育がされているので、

個人の判断で自主避難するのは難しかったかもしれません。

しかし、死が迫る危機に際しては、自らが自らの命を守る

という最低限の道に選択の余地はありません。

今回の事故を自分の問題として、自分がその場面にいたら、

どうしていたのか、また再び遭遇したら今度はどうするのか、

もう一度再点検する機会を頂いたように思います。

他人事と考えている限り、悲劇は繰り返されます。

わき道とは選択肢のことで、時間を追って選択肢は減っていく。

選択肢が許されるうちに危機を脱出するのが

自らの命を守るということだと禅語は教えます。

 

有無相生

 

 

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