老子小話 VOL 700 (2014.04.12配信)

夢は砕けて夢と知り

愛は破れて愛と知り

 (重松清、「星をつくった男」)

 

歌謡曲のヒットメーカで作家だった

阿久悠氏の物語「星をつくった男」から、

氏が作詞、小椋佳が作曲した「古城の月」

の中のフレーズをお届けします。

阿久悠さんによると、歌謡曲の真価は、

「いかに聞く気のない人々の耳に飛び込み、

一瞬で心を惹きつけるか」だそうです。

若いときには演歌はなじめませんでしたが、

年を重ねると、「津軽海峡冬景色」や「舟唄」が

心に沁みてきます。

実際、竜飛岬から海峡を望みました。

厳しい世間を自然の荒波にたとえるなら、

そこで長く揉まれてくると、そこに生きる人の

気持ちがわかってくるのでしょうか。

お届けする言葉は、

「夢も愛も、時も友も失ってはじめて、

そのよさがわかってくる」ということですが、

荒波の真っ只中では無我夢中で、そのよさを

かみ締める余裕なんかない。

わたしにとっての演歌も、生きるのが精一杯で

そのよさを味わう余裕もなかったのでしょう。

荒波とそのなかの自分を客観化できるようになったとき、

歌の意味やよさが見えてくる。

大切なのは、ものごとをすぐに評価しないで、

わかるときが来るまで心の中で暖めておくこと。

性急に白黒決めつけるのは避けたいところです。

最後に、本号で700号を迎えることができました。

ざっと4900日の長丁場でしたが、皆様の応援で

何とか続けることができました。

今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

 

有無相生

 

 

戻る