◆老子小話 VOL
699 (2014.04.05配信)
未知の同志はきっと別の時代を
足を引きひき歩いていたのだ。
(カルヴィーノ、「パロマー」)
どうしてこのような言葉がでてくるのか?
その経緯から説明したい。
パロマー氏は東洋の国のバザールで
不揃いのサンダルを買ってしまった。
サンダルの山が露天の店先に積まれ、
そこから同じペアを探していたところ、
露天商から渡されたものを試さずに買ったのである。
パロマー氏は、サンダルの山に残された
もう一つの不揃いのサンダルを買う客に思いをはせる。
サンダルは山にどんどん足されるので、
その客が買うころは、何世紀も経っているかもしれない。
そうするとその客と私は、不揃いのサンダルを
引きずりながら歩く、時代を隔て連帯感でつながる同志となる。
うっかりした自分に腹を立てるでもなく、
露天商のいい加減さを責めるでもなく、
未来のうっかりさんへの連帯の証として、
このサンダルを持っていようと、氏は心に決める。
身の回りのささいな出来事から空想を膨らまし、
未来や過去とつながる思索の面白さを教えてくれます。
有無相生