老子小話 VOL 699 (2014.04.05配信)

未知の同志はきっと別の時代を

足を引きひき歩いていたのだ。

 (カルヴィーノ、「パロマー」)

 

どうしてこのような言葉がでてくるのか?

その経緯から説明したい。

パロマー氏は東洋の国のバザールで

不揃いのサンダルを買ってしまった。

サンダルの山が露天の店先に積まれ、

そこから同じペアを探していたところ、

露天商から渡されたものを試さずに買ったのである。

パロマー氏は、サンダルの山に残された

もう一つの不揃いのサンダルを買う客に思いをはせる。

サンダルは山にどんどん足されるので、

その客が買うころは、何世紀も経っているかもしれない。

そうするとその客と私は、不揃いのサンダルを

引きずりながら歩く、時代を隔て連帯感でつながる同志となる。

うっかりした自分に腹を立てるでもなく、

露天商のいい加減さを責めるでもなく、

未来のうっかりさんへの連帯の証として、

このサンダルを持っていようと、氏は心に決める。

身の回りのささいな出来事から空想を膨らまし、

未来や過去とつながる思索の面白さを教えてくれます。

 

有無相生

 

 

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