老子小話 VOL 698 (2014.03.29配信)

祈りとは無言の心のねがいであり、

にわかな愛のほとばしりでありましょう。

 (ポール・ギャリコ、「ルドミーラ」)

 

ボール・ギャリコ氏の「スノーグース」

(新潮文庫)に、聖女ルドミーラに祈った

牝牛の話がでてきます。

動物だって、人間と同じように祈ることがあり、

祈りは言葉に出して唱えなくても、

一瞬のうちに魂を無限なもの、善なるものに

結びつける切なる願いであってよいという。

例えば、美しい景色を見て、

「この景色がいつまでも続くように」と願ったり、

「今度は愛する人といっしょに見たい」と願うように。

そんな願いを心に持ちながら、日々努力を重ねていると、

いつかきっとそれが叶う奇蹟が起こります。

牝牛は、自分が祈っていることに気づかず、

ただ、道端のルドミーラ像を目にした瞬間、

自分も他の牛と同じように乳を与え、

受け取る喜びを味わいたいと思っただけです。

奇蹟の内容は、本を読んでのお楽しみです。

宗教的な裏づけのない日本人は、困ったときに

祈ることが多いようです。

しかし、ここでの祈りは、

「こうありたい」とか、「こうしたい」とか、

心の切なる願いを継続的に持ち続け、

それに向かって歩んでいくことのように思えます。

奇蹟を見ることなく道半ばで倒れることもありましょう。

しかし、切なる願いを次の者に受け継いでもらい、

いつかそれが実現する時がやってくる。

「愛のほとばしり」であるからこそ、願いは共感され

他のひとにも受け継がれていく。

祈りは、いつでもふと沸き起こってくるもので、

それを忘れずに支えにすることが奇蹟を呼ぶようです。

 

有無相生

 

 

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