老子小話 VOL 696 (2014.03.15配信)

ぼくが ここに いるとき

ほかの どんなものも

ぼくに かさなって

ここに いることは できない

 (まど・みちお、「ぼくがここに」)

 

先月他界された、まど・みちおさんの詩

「ぼくがここに」より、冒頭の所を引用しました。

「ぞうさん」の歌詞は誰でも知っているでしょう。

この詩も小学校の教科書に出ているそうです。

ぼくの存在は他の誰にも置き換えることはできない。

ぼくの存在を可能にした、すべての恵みに感謝したい。

そんな気持ちが自ずと芽生える詩です。

小学生は何のことやらまだわからないかも知れないが、

この詩を教科書で読んだあと、何年先で、何十年先で、

何かの拍子にその意味が実感できるときがあると思います。

いじめや挫折で、「ぼくなんか生きていてもしょうがない」

と思うことが誰しもあります。

でも、ぼくが「ここにいる」ことがすばらしいことなんだ、

とこの詩は教えてくれます。

ぼくしかできないことをぼくはしているんだと、

生きる勇気を与えてくれます。

3.11大震災でなくなられた女性が母親に遺した言葉は、

「わたしを生んでくれてありがとう」でした。

母親だけでなく父親がいなければ子は生まれません。

ぼくが「ここにいる」が、未来の「わたし」を支えている。

ここにいる「ぼく」にとって、未来の「わたし」は陰。

未来の「わたし」にとって、いまの「ぼく」は陰。

陰がなければ、光は生まれません。

「ここにいる」は、光を放つすばらしいことです。

まど・みちおさんは、こころの詩を授けてくれました。

教科書には、いまわからなくても、いつかきっとわかることを

のせて欲しいものですね。

 

有無相生

 

 

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