老子小話 VOL 695 (2014.03.08配信)

All that glitters is not gold.

光輝くもの、かならずしも金ならず。

 (シェイクスピア、「ヴェニスの商人」)

 

高校の英文法の教科書で見かけた言葉でした。

部分否定で、「かならずしも~でない」ですね。

教科書には出典が書かれてなかったので、

今回、「ヴェニスの商人」を読んでいて、

ポーシャの結婚相手を選ぶための、

金、銀、鉛、3つの箱から選ぶ場面で

出会って、感慨を新たにしました。

鉛の箱を選んでポーシャをものにした

バサーニオも言っています。

「外観は中味を裏切るもの」

「顔に塗るものに目方をかければ尻はますます軽くなる」

ソチ五輪で言えば、光輝いたパフォーマンスをしても

必ずしも金メダルは取れないとすると皮肉になるでしょうか。

ここでは、外観の派手さに惑わされずに、

地道に努力を重ねる道筋に真の価値があると

という警句と捉えておきます。

マスコミというのは、大会前に輝く者を取りざたして、

メダル何個は堅いという記事を書きます。

プレッシャーの重圧で思うような結果が出ないときもある。

大会前は目立たず伸び伸びと試技でき、結果が出るときもある。

先週、光と陰の話をしましたが、光の部分に惑わされて、

陰を見失うなというのが、シェイクスピアもこの言葉に

こめていると思われます。

3.11大震災から3年を迎えるにあたり、玄侑宗久氏が、

震災の記憶を忘れて日常に戻りたい気持ちと、

忘れずにいたい気持ちのせめぎあいにいると述べておりました。

陰を捨てて光に向かうことはできません。

陰と光の両方に支えられて、前に進むことができます。

 

有無相生

 

 

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