老子小話 VOL 692 (2014.02.15配信)

あらしがすっかり青空にしてしまった

 (尾崎放哉)

 

孤独の俳人尾崎放哉が、あらしの後に詠んだ句です。

一人ぽっちの生活をしていると、自然の移り変わりが

よく見えてくるのでしょうか。

空に黒雲が湧き、あらしが吹き荒れているのを

じっと家の中で耐えています。

とにかくあらしが止むのをひたすら待つしかありません。

しかしそんなあらしもいつしか止むものです。

止んだ後の空には青空がどこまでも広がっています。

まるで、あらしが雲を一掃して青空を呼び込んだようです。

あらしを避けるべきもの思っていたのが、

こんな素敵な青空を見せてくれるあらしはまんざらでもない、

と、あらしを見直してしまった気持ちが現れています。

最近「幸福学」の白熱教室のTV番組を見ました。

そのなかで、逆境に出会ったら思う存分落ち込んでいいと

先生が言っていました。

逆境に抵抗するのではなく、逆境を一度受け入れて、

そこから立ち直っていくプロセスが心を強くしていくようです。

逆境や挫折は、人生のあらしのようなものです。

心の乱れにじっと耐えた後に、心の建て直しの一手が見えてきます。

まるで、あらしが迷いを吹き飛ばしたかのように。

老子にも、「ひょう風はあしたを終えず」という言葉があります。

あらしはいつまでも続かない。

それどころか、あらしのお陰で見えなかったものが見えてくる。

その思いを詠んだのが、放哉の句のようです。

 

有無相生

 

 

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