老子小話 VOL 690 (2014.02.01配信)

何事においても、完璧に到達するのは、

付け加えるものが何もなくなった時ではなく、

削るものが何もなくなった時である。

 (サン・テグジュペリ)

 

「星の王子様」や「夜間飛行」を書いた

サン・テグジュペリのタオ的な言葉です。

ひとは完璧を目指そうと、いろいろな要素を

付け加えようとする。

それは、完璧な姿をあたまに描き、

それに足りないものを付け加えることで

理想に近づこうとするからである。

デザインでいえば、万人の好みに合うように

各人の好みをデザインに加えていくことである。

その結果、完璧なデザインができるかというと、

まるで特徴のない平凡なデザインに仕上がってしまう。

付け加えるものが多くなると

全体のバランスを取り難くなる。

一方、余計なものを次々に取り去り、

取り去るものが何もなくなったとき、

均整の取れた、機能にあったデザインになる。

老子は、「大成は欠くるが若し」(45章)という。

完璧なものは、どこか欠けているように見える。

シンプルなデザインは、どこか物足りないように見える。

もっと多彩にしたほうがよいとか、

もっとアクセサリーが欲しいとか、いろいろ思いつく。

しかし、シンプルであるが故に、いろいろなものと

コーディネートでき、飽きが来ない。

デザインだけでなく、人の生きかたも同様である。

すべて欲求を満たしてこれ以上何も要らないというのが

最高の生き方ではない。

欲求を削っていって、これ以上削れないところで

生きていくのが持続可能な生きかたといえる。

荷を軽くして旅をするなら、どこにでも行ける。

 

有無相生

 

 

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