老子小話 VOL 687 (2014.01.11配信)

宿かさぬ火影や雪の家つづき

(与謝蕪村)

 

小生に蕪村の面白さを教えてくれた

森本哲郎氏が年明けに亡くなられました。

蕪村句集をぼろぼろになるまで読んで、

句からイメージの世界に羽ばたかせる解説は

小生を一気に蕪村に引き込みました。

今回は、哀悼の意をこめて、蕪村の句をお届けします。

雪に埋もれる家々から明かりがこぼれています。

そこを雪道の道中に疲れた旅人が、

宿を借りようと家々を一軒ずつ訪ねていく。

しかし、どの家も宿を貸してくれない。

白銀の世界はわずかな光をも反射して、

家の中に人がいることを教えてくれる。

その火影(ほかげ)を頼りに旅人は延々と歩いていく。

この句は、世間の冷たさを教えてくれますが、

それにもめげず希望を頼りに前に進む旅人の姿を表わし、

読む人の心に勇気を与えてくれる。

更に、暗闇と、雪に埋もれる家々の存在を教えてくれる

光が点々と続いている一幅の絵が目に浮かんでくる。

蕪村の世界は、画家のイメージが句に表現される。

またイメージには、苦しい生活を受け入れる人々の心も表現される。

旅人に宿を貸す余裕など無い、越冬の耐乏生活。

光の道に導かれて、一縷の希望と情けを頼りにする旅人の歩み。

その光景を見つめる蕪村のやさしさを教えてくれたのも森本氏でした。

 

有無相生

 

 

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