老子小話 VOL 685 (2013.12.28配信)

闇がなければ光はなかった

闇は光の母

(谷川俊太郎、「闇は光の母」)

 

今年最後のお届けとなりました。

この一年ご愛読いただいた皆様に感謝いたします。

谷川俊太郎さんの詩の最初の言葉です。

旧約聖書の創世記にも、神さんは「光あれ」といい、

世界の始めに光と闇を分けたと書かれています。

光が生まれる前に闇がありました。

老子第42章には、

「道は一を生じ、一は二を生じ、

二は三を生じ、三は万物を生じる」

とあります。

一は闇で、闇から光が生まれ二つになり、

闇と光をつなぐものが生まれ、万物が生まれます。

素粒子的にいうと、闇と光をつなぐものは、

糊の粒子とよばれるグルオン(gluon)になるのでしょうか。

アベノミクスのお陰で景気も上向きになりました。

光が見えてきたように思えますが、

光に浮かれず、闇の部分に立ち戻って今を考えないと

いけないとその詩は語っているように思えます。

「光を孕み光を育む闇の

その愛を恐れてはならない」

と締めくくられます。

現代は、死を他人事として闇に葬りますが、

生物は死があるから、遺伝子を次世代に残しながら、

進化を遂げながら環境に適応して、生き残るともいえます。

死で限られた時間のなかで生を楽しむ存在ともいえます。

谷川さんの詩から、そんな大きな宇宙の営みを感じました。

目に見えないその営みを闇の愛と受け止めると、

死んで肉体は地上から消えても、

闇の愛としてこの世を見守る幸せを味わえます。

谷川さんの詩は、「谷川俊太郎詩集」(岩波文庫)で見つけました。

年末年始に是非読まれると、新しい年を静かなこころで

迎えられること請け合いです。

では、よいお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

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