老子小話 VOL 682 (2013.12.07配信)

人間は動いているけれど、

情報は止まっている。

(養老孟司、「手入れという思想」)

 

久しぶりに養老先生の文庫本を手に取りました。

インターネットを大量の情報が飛び交い、

どこに行っても誰もがスマホに見入っている世の中です。

しかし、情報は止まっていると捉えるのはさすが脳学者です。

人間は物を見ているとき、周辺や背景は止まっている。

我々が物を考えるとき、なぜ情報を使うかというと、

止まったものを使わないと、我々は物が見えず、

考えられないそうです。

情報を言葉で記述することは、世界を言葉で切り分ける。

言葉で記述することは、変動する世界を止めて見ることになる。

言葉に記述できないものは音として表現できる。

詩や俳句は、音楽と言葉の中間であり、

耳を使って動くものを変化する音で表現している。

老子の道徳経は、

「道の道とすべきは、常の道に非ず。

名の名とすべきは、常の名に非ず。」で始まる。

これが道であると言葉で表現すると

変化していく道の実体を捉えそこなう。

名前をつけると、名前が実体に先行する。

変化する世界(道)を変化する音で表現するため、

老子は詩になっていくことが何となく理解できます。

詩だから、どのように受け止めるかひとそれぞれで

時間とともに変化することに面白みが沸いてきます。

人間は自分自らが変わっていくから、固定したもの(情報)を欲しがる。

それが、ひとがスマホにくぎづけになる理由のようです。

 

有無相生

 

 

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