老子小話 VOL 681 (2013.11.30配信)

うづみ火やつひには煮ゆる鍋のもの

(与謝蕪村)

 

鍋の季節になりました。

ことしも残すところあとひと月です。

去年の今頃もこんな事をいっていたようです。

うづみ火って何のことと思われる方も多いでしょう。

漢字で書くと「埋火」となり、灰に埋もれた火のことです。

昔の人は炭火で暖をとっていたので、

炭が燃えて最後になると灰に埋もれて、

消えたのかまだ燃えているかわからなくなります。

それでも鍋のものを暖めようとして

ずっと置いておくと最後には煮えてくる。

そんな冬のスローライフを詠んでいます。

今ならガスやIHヒータですぐに鍋物はできますが、

蕪村の時代は、暖をとりながら温まるのを待って、

食事にした光景がこの句から浮かびます。

火鉢のうづみ火を見て、火力が足りるか不安だったが、

とりあえず鍋をのせて温まるのを待ちます。

待っている間、読書でも始めたのかもしれません。

鍋の事など忘れて読みふけっていると

傍からことことと音が聞こえてくる。

わずかな火でもゆっくり待っていれば煮えてくる。

そろそろ鍋のものをつつこうかという、

時の流れを楽しみながら季節を味わう姿勢に

心が温まります。

 

有無相生

 

 

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