老子小話 VOL 677 (2013.11.02配信)

人は何に化るかも知らじ秋のくれ

(与謝蕪村)

 

秋も深くなりますと蕪村の句が欲しくなります。

秋の暮れには、すすき野に狐や狸が出て旅人を化かすと、

昔、言われておりました。

「秋の暮 仏に化ける 狸かな」(蕪村)

という句があるように、めったに会えない仏様に

出会えたのでありがたく思っていると、

実は狸のしわざだったと後で気づくわけです。

日暮が早くなり、うらさびしさが増す夕闇には、

何かが出そうな雰囲気が漂います。

しかし、狐や狸よりももっと恐ろしいのが人であると

蕪村は詠みました。

「人は何に化けるか」誰も知らない。

狐や狸にだまされるより、人が人にだまされるほうが

人生ではずっと多い。

悪い意味だけでなく、よい意味のだまされ方もある。

小さなときはふつうの子供だったのが、

大人になって才能を発揮する場合もある。

そんなサプライズを与えてくれるのも、人の化け方です。

秋の暮れに、何に化かされるかはわかりませんが、

ひょっとして、人に化かされるかも知れません。

冗談として、厚化粧すると誰だか気づかないこともありますが。

個人的にはつい最近、会社の帰りのバスから降りると、

バス停近くの暗闇に女性が誰かを待っている姿を見ました。

近づいてみると家内でした。

いつ帰るとも連絡していなかったので、まさにサプライズでした。

昔なら、「何に化けるかも知らじ」で狸と勘ぐったでしょうね。

 

有無相生

 

 

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