老子小話 VOL 672 (2013.09.28配信)

人は、裸で母の胎を出たように、裸で帰る。

来た時の姿で、行くのだ。

労苦の結果を何ひとつ持って行くわけではない。

(コヘレトの言葉)

 

旧約聖書の中の「コヘレトの言葉」を再度選びました。

当たり前の教えですが、意味は深いです。

人間は母親の胎内から生まれるときも、

死んで行くときも、裸です。

あの世には何ももっていくことはできません。

生まれて成長するに従って、知恵を身につけ、

社会で職業につき、社会に貢献し、

対価として報酬を受け、自分の身を養う。

うまくすれば、伴侶にめぐり合い、家庭を持ち、

子孫を残し、家族に看取られながら死んでいく。

人生は楽しいこともあるが、苦労も多い。

苦労が報われて成功し、富と地位を得るひともいる。

苦労が報われずに、一生貧困に苦しむひともいる。

しかし死ぬときには、労苦の結果(富や名誉や苦痛や苦悩)

を何一つあの世には持っていけない。

人生は、結局、裸の自分に労苦の結果がくっついているに過ぎない。

しかも裸の自分には、遺伝子的に38億年の生命の労苦と

祖先の労苦が埋め込まれている。

子を持つとは、自分の労苦の結果を未来に伝承することになる。

それじゃ、この空しい人生をどのように送ればよいのか?

その問いに対し、「コヘレトの言葉」はうまく答える。

「人間にとって最も良いのは、飲み食いし

自分の労苦によって魂を満足させること。」

自分の心を裏切ることはできない。

最後はそこに行き着く。

 

有無相生

 

 

戻る