老子小話 VOL 670 (2013.09.14配信)

戦争はいやだ。

勝敗はどちらでもよい。

早く済みさえすればいい。

いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がよい。

(井伏鱒二、「黒い雨」)

 

2020年東京五輪が決まり、経済復興に拍車がかかっています。

明確な目標を定め、それに向けて力を結集するプロセスは

日本人は得意なような気がします。

明治維新から富国強兵で、経済面軍事面で西欧に追いつく。

戦後は、冷戦による軍需景気で、目覚しい経済復興を遂げる。

1964年東京五輪は、首都高や新幹線の建設を導いた。

前向きな姿勢は大切ですが、他方、歴史を忘れない姿勢も

過ちを繰り返さないために必要です。

8月6日は広島原爆、8月9日は長崎原爆の投下の日です。

世界の人たちは、原爆の怖さを知っているのは日本人しかいない

と考えます。

ピカドンの炸裂で放たれた放射線と熱線で、

一瞬にして人が丸焦げになり、その人の影が壁に転写された実物を

目の当たりにすれば、核兵器の使用はありえないと誰もが気づきます。

井伏氏の「黒い雨」は、被爆した生活者の目で原爆の惨劇を語ります。

映像で見るより文字で読む方がその生々しさは心に残ります。

放射線を浴びて、皮膚が溶け、腐りながら息絶えていった方々の無念は

言葉に尽くせません。

生物化学兵器の使用で戦争を起こそうする国が原爆の使用をした歴史は

決して忘れてはいけないと考えます。

シリア国民は、戦争による被害者にはなりたくない思いで一杯です。

正義の戦争で死ぬよりも、不正義のままで生きのびた方が平和でしょう。

「犬でも、生きていれば、死んだ獅子よりましだ。」(コヘレトの言葉)

は戦争に飲みこまれる国民の願いです。

 

有無相生

 

 

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