老子小話 VOL 662 (2013.07.20配信)

さりげなく言ひし言葉は

さりげなく君も聴きつらむ

それだけのこと

(石川啄木、「一握の砂」)

 

夏休みの推薦読書本100冊の広告に

あがっていたりする啄木の歌集から

取り上げてみました。

有名な歌は、

「はたらけどはたらけど猶

わがくらし楽にならざり

ぢっと手を見る」ですが、

この「さりげなく」もいいですね。

何かを訴えようとする言葉ではなく、

ふと心に浮かぶ何気ない言葉を思わず口にする。

それを聴いた相手も、それに反論するのでもなく、

同調するのでもなく、

あたかも聴こえていなかったように聴いている。

自分の気持ちを素直に表現するのは、ふと口に出る言葉。

その気持ちを素直に受け入れるには言葉は要らない。

参議院選挙もあと一日ですが、候補者の公約も、

力まずさりげなく言ってもらいたいですね。

選ぶほうも、表面的な一時的な約束には踊らない。

知りたいのは、候補者の心のうちを明かす「さりげない」言葉。

それをさりげなく聴いて、候補者の真のやる気に一票を託す。

啄木の歌は、自然体のふたりが心を通わす一瞬を

「それだけのこと」で締めくくります。

選挙のほうは、有権者のさりげない一票が

さりげなく国の未来を決めていきます。

民主主義も「それだけのこと」です。

 

有無相生

 

 

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