◆老子小話 VOL
658 (2013.06.22配信)
意に至る所あるも、
愛に亡う所あり。
(荘子、人間世篇)
かわいがる心は至れり尽くせりでも
ちょっとした不注意から
その愛がすっかりだめになることがある。
「荘子」に出てくるたとえ話です。
馬を大事にする人間は、馬の小便をいれるのも
高価で美しい大蛤の器を用いるほど、
至れり尽くせりの扱いで可愛がる。
たまたま馬に蚊や虻がたかっているのを見て、
いきなり体をたたけば、馬は驚いて
くつわをかみ切り手に負えないほど
暴れ狂うというお話です。
馬の本性を見失うと
愛情はあだになって帰ってくる。
これって、どこかで聞いたような話です。
馬じゃなくても、人間の世界でも当てはまる。
大事に育てた子供でも、ちょっとしたことで、
親といさかいを起こし、愛情がだめになってしまう。
子供もひとりの立派な人間であり、成長とともに、
自分の意志で生きたいと思うようになる。
親の意は、いつまでも子供として愛の対象だが、
子の意は、自立した人間のつながりを求める。
愛情の傾け方はいつも同じではなく、
厚く包んでいたものが次第に距離を置き、
空気のように至る所で感じられるようになれば
うまく行くのでしょうね。
有無相生