老子小話 VOL 653 (2013.05.18配信)

企者不立。跨者不行。

自見者不明。自是者不彰。

(老子、第二十四章)

 

つま立つ者は立たず、

またぐ者はゆかず。

自らあらわす者は明らかならず、

自らよしとする者はあらわれず。

 

NHKの「100分de名著」で老子が

取り上げられています。

「落ちこぼれの哲学」なんてひどい評価を

受けましたが、実際は、「しぶとく生きる」哲学です。

しぶとさの根源は、無理をしない自然に学ぶ所にあります。

つまさきを立てて背伸びしても、長く立っていられない。

ひとより早く先に行こうと大またに歩いても、長くは歩けない。

自分を目立たせようとしても逆効果で、

自分で自分の行いをよしとしても誰も評価しない。

要するに、自分の身のほど以上に見せようとしても

長くは持たず、狙った効果と逆の結果になる。

結局「あるがままに生きる」ことが、しぶとく生きることになる。

陸上で一番速く走れるチータは時速110kmで走れるそうです。

しかしその最高速は20秒しか続きません。

チータに狙われたシマウマは20秒をしのげれば生き残れます。

逆にチータは20秒以内で捕まえられる獲物しか狙わない。

つまり、走る前にできるだけ近づき、足の遅い子供を狙う。

自然界では、足の速いチータですら、足に任せてやたらめったら

狩をするわけでなく、最小のエネルギーで確実なえさを狙います。

自分の限界をわきまえて、その中で精一杯生き残ろうとします。

人間だけが見かけにこだわり、見かけで判断を誤るいきもののようです。

老子は、そんな人間に向かい、

無理をして命を削ることはないとつぶやいています

 

有無相生

 

 

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