◆老子小話 VOL
652 (2013.05.11配信)
Life is what happens to you
while you are making other plans.
(星野道夫、「イニュニック」)
人生とは、何かを計画している時に
起きてしまう別のできごとのこと。
星野氏の友人シリアの口癖で、氏もまた
好きな言葉だった。
アラスカの原野に散った氏の人生が
その言葉通りの生き方であった。
「イニュニック」(新潮文庫)を読むと、
アラスカの自然とそこに生きる人々の
邂逅が目の前に映像として繰り広げられる。
「イニュニック」は、エスキモー語で「生命」の意味。
カリブーを撃って肉を裂いて人は命をつなぐ。
熊は遡上したサケを狩猟し命をつなぐ。
サケは自分の命と引き換えに次世代に命をつないでいる。
厳しい自然では、命のやり取りが生きることになる。
その中で人は、自然のなすがままに身をゆだねる。
結婚式の直前に、事故でフィアンセを失う場合もある。
大学に合格したのに家業が破産してあきらめなければ
いけない場合もある。
「人生ままならない」のは、厳しい自然にいなくても
思い知らされることである。
しかし、アラスカの自然は毎日がその連続である。
ままならないからこそ、何が起こっても受け入れる
覚悟ができてくるのかもしれない。
また、思わぬことが起こるから、生きがいがある
ともいえるだろう。
有無相生