◆老子小話 VOL
647 (2013.04.06配信)
人間は変わりはしない。
ただ人間へ戻ってきたのである。
人間は堕落する。
(坂口安吾、堕落論)
四月に入って、若者たちは、
入学、入社と希望に燃えて
新たな生活をスタートさせる。
安吾氏の言葉は、仏の言葉のように
若者たちに贈られる。
この世に生まれてきたときですら、
「生れ落ちる」といわれるので、
人生落ちることからスタートする。
まっさらな心が、しつけや教育を受け、
人間かくあるべきという姿を教えられる。
そして実際の社会に出ると、
余りのギャップに愕然とする。
落ち込んだままでいるのが五月病である。
そんなときに安吾氏の言葉は元気を与えてくれる。
堕ちることを認識しないと救いはない。
ギャップを一生抱えるのが生きるということになる。
「人生は苦である」という仏の言葉に通じる。
欲を持ち、現実とのギャップから苦が生じ、
苦と取り組めるから、生きがいがある。
つまり世間の人は皆、苦を抱えて堕落していると
眺めてみると、落ち込みから解放されるかもしれない。
苦と取り組む姿がひとに感動を与える。
光は闇から発するのである。
宇宙ですら暗黒物質で支えられているように。
有無相生