老子小話 VOL 646 (2013.03.30配信)

求美則不得美、不求美則美矣。

(白隠禅師)

 

美を求むればすなわち美を得ず、

美を求めざるすなわち美なり。

 

柳宗悦氏の著書「美の法門」(岩波文庫)の

中の「法と美」で引用された言葉である。

無名の人が作った茶碗に美しさを見出すのは

どうしてなのか?を仏語とともに説明される

面白い本である。

優れた陶芸は、自力で修行した天才陶工が

技と心を磨いて勝ち得た作品である。

一方、朝鮮の刷毛目茶碗は、平凡な職人等が、

他力に動かされるまま量産した作品で

そこには自由奔放な美が滲み出ている。

それをまねて日本の名工がどんなに

刷毛目を施しても、自由奔放さを表現できない。

本当に美しいものは、美しさを狙って作れない。

美しさを狙った心が邪魔するからである。

平凡な職人が、無心に茶碗を作る作業の中で、

偶然の美がついてくる。

今朝TVで小川洋子氏が対談で、

「自分以外の誰かがそれを作ったと思える小説が

自分にとって満足がいく」と語っていました。

茶碗だけでなく小説も、他力が生み出す美しさが

多種多様の美しさを引き出しているようです。

 

有無相生

 

 

戻る