老子小話 VOL 635 (2013.01.12配信)

一丁空しき谷の響は

無生音をきく便りなる

(白隠、藪柑子)

 

東京渋谷で開催中の白隠展にちなみ、

今回は、「隻手の音声(おんじょう)」

をお届けします。

両手で叩くと「パン」と音がしますが、

片手で叩く音はどんな音がするか?

という問いに対する答えです。

一見して何にもない谷間で

耳を澄ますと、音なき音の中に

森羅万象の響きが心に入ってくる。

耳で音を聞くのではない。

空っぽの心で全宇宙のエネルギーを感じる。

「隻手の音声」は、自らの片手がアンテナとなり、

全宇宙のエネルギーを受けとめるというイメージです。

両手で叩くときには、音の強さや

リズムは自分で作り出せます。

しかし、片手で叩く音は、

心のアンテナを持たない限り、永遠に聞こえません。

アンテナの感度次第で、大きくなったり

かすかになったりします。

新年早々、肉離れを起こし歩行に不便していますが

足の筋肉のお陰なしに一歩も歩けないという声を

聞くいい機会だと思っています。

これも自己の中の宇宙を感じる「隻手の音声」ですね。

 

有無相生

 

 

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