◆老子小話 VOL
630 (2012.12.08配信)
世界という、この大きな構成物は、
人間の個体が植物や動物の個体たちの生命をうばい、
それを噛みくだきのみくだし、
消化して自分の栄養を摂るように、
ある民族、ある国家を滅亡させては、
自分を維持する栄養をとるものである。
(武田泰淳、「滅亡について」)
何とも厳しい言葉である。
誰かが生き残ることは、誰かが滅亡することである。
誰かが当選すれば誰かが落選する。
新しいものが生まれるために古いシステムは
滅びる運命にあるという真実は変わらない。
古いシステムは既得権を維持したいので、
新しい勢力を潰しにかかるから争いが生じる。
原発も、より安全で持続可能な発電システムに
いずれ置き換わる運命にある。
それでないと人類の進歩は無い。
地球にも星としての寿命があり、人類もいずれ滅亡する。
問題は、その寿命前の人類の自滅である。
放射能による自滅か飢饉による自滅かわからないが、
世界の観点からは、民族同士の争いによる滅亡は、
人類のシステム維持のための仕掛けに見えてくる。
古いものを新しいもので置き換えるための仕掛けである。
この仕掛けにより、人類は変革を続け生命を維持してきた。
日本の社会も、これまでの大企業が力を失い、
新興企業が未来を支える時代となりつつある。
良い手本はアメリカだが、手本は自ら作っていくのが
日本に残された道である。
ノーベル受賞者の山中先生も言われるとおり、
「失敗に見えることが素晴らしいことの始まり」である。
人類の歴史が失敗の連続だったから進歩を遂げられた。
武田氏の言葉は、老子の「天地不仁
以萬物爲芻狗」
を思い出させます。
道は個体をまるでいけにえの犬のように扱うが
万物のシステム全体として平等に維持管理する。
そう考えると厳しい言葉も温かみを帯びてくる。
有無相生