◆老子小話 VOL 611 (2012.07.28配信)

兵法勝負の道におゐては、

何事も先手先手と心懸くる事也。

かまゆるといふ心は、

先手を待つ心也。

(宮本武蔵、五輪書)

 

兵法とは、刀で戦う道を説いたものだが、

その極意は生きるヒントも与えてくれる。

百戦錬磨の剣の達人は、

「何事も先手必勝であり、構える心は

先手の隙をうかがう心という。」

戦う相手は人間だから、相手の隙に付け込み

心理的に揺さぶりをかけることもよしとする。

正々堂々というのはスポーツの話で、

生死を決める戦いなので、相手の剣よりも先に、

自分の剣が相手を切らないと明日がないのである。

だから、刀を抜かずに勝負を決めるのが、孫子同様、

最善の勝利ということになる。

しかし、人生には勝負を迫られる場面が出てくる。

そんな時、局面の好転を待っていては、勝利はおぼつかない。

先手を打って、追い込まれた局面を乗り越えていく。

武蔵は、この形勢逆転を「渡を越す」という。

刀を構える前に心を構えないと先手は打てない。

人生における勝負の相手は人間だけではない。

不景気や就職難や被災だったりする。

いずれ政治が解決するなんて期待はできない。

自らが心構えして先手を打ち、生き延びるしかない。

 

有無相生

 

 

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