◆老子小話 VOL 610 (2012.07.21配信)

敵を打ち負かすことを糧に生きている者は、

敵が生きていてくれることが肝要事だ。

(ニーチェ、「ただひとりいる人間」)

 

なかなか意味深な言葉です。

身の回りはこんなことばっかりです。

万年野党のどこかの政党。

与党がいるから反対できた。

自分が与党になると当惑する。

反対するものが消えたからである。

スポーツの世界も芸の世界も、

チャンピオンを目指しているときは、

それを生きがいに何でも頑張れる。

しかし自分がチャンピオンになってしまうと、

新たな敵が必要になる。

2階級制覇だったり、小説家が映画作りをやるとか

別のジャンルでチャンピオンになろうとする。

人間とは目指すものがないと生きていけない。

しかし、敵なんか作るからあくせくする。

自由になるのには自分の内の欲を捨てること。

まさに老荘や仏教はそれを説く。

ニーチェの言葉は、自分の内に欲望がみなぎるから

それを捨てることを生きがいにできる、

いっているように思えてきた。

自分に満足がいかないと考える者は己が敵である。

己に克つことを生きがいにする者は

まずは生きていることが肝要となる。

これほど強い生き方はない。

 

有無相生

 

 

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