◆老子小話 VOL 605 (2012.06.16配信)
人間が木の股から生まれない以上、
系図の有無にかかわらず、
どこの誰だろうと祖先の猿まで
ひとしくつながるものであろう。
(色川武大、怪しい来客簿)
いねむり先生こと、色川さんの名言だと思う。
人類の歴史をやさしく述べたもので
当たり前といえば当たり前、
猿からバクテリアまでさかのぼることができる。
そこまでいくと荘子の「万物斉同」へつながる。
世間では生まれや育ちがどうだとか言われるが
家系図の途中でどんな人物がいたかは重要ではなく、
生き死にを繰り返し、どうにか続いてきたから、
今の私があるわけである。
生物学的には、この世に存在して不注意を犯さず
手早く一生を終え「つなぐ」役目を果たせば、
ほっと一息なのである。
存在感などは存外もろいもので、
「在ると一心に信じて生きる」だけで
「つなぐ」役目を果たしているようだ。
老年になると墓のことが気になりだす。
でも死後のことより、在る間にどうつなぐかを
考えたほうがよいが気が楽である。
墓にこだわる父親の執念とその滑稽さを記した
「怪しい来客簿」(文春文庫)の「墓」の話は、
おすすめです。
有無相生