◆老子小話 VOL 603 (2012.06.02配信)

花実双美

(浅田次郎、「ま、いっか。」)

 

花も実もふたつ美し

 

最近出た浅田次郎さんのエッセイで

紹介された言葉をお届けします。

京都のお茶屋さんにかかっていた

掛け軸にあったそうです。

原典は不明ですが深い言葉ですね。

「花(外見)より実(中身)が大事」

なら、普通の言葉になってしまいます。

浅田さんは「われわれの社会は、

実を求めて花を忘れてしまった」という。

ひとは花を見ることで自然を見る。

「花は持ち運ぶことのできる自然である」

人間も、花と同じである。

人間の中身を見ることはできないので、

外に現れた立ち振る舞いや言動で

その人の自然(ひととなり)を知る。

花の美しさを通して、実の深さを知る。

身の回りは自然の美しさで溢れている。

ただ日常が忙しすぎて美しさを見逃がしている。

「花実双美」の心構えがあれば、

外見から、隠された自然の神秘を知り、

その神秘が生む外見の多様性に感動する。

外見(花)にも神秘(実)にも、相応する美しさが伴う。

「ま、いっか。」(集英社文庫)は、

いろいろ考えさせるエッセイでした。

 

有無相生

 

 

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